花びらたちが散ってしまう前に

あなたに言わなければいけない事がある。




8.花より団子、よりもキミ  前




「それでは、これからのこと頼んだぞ。カカシ。」

「はい。」


それまでの、厳しい表情から一転して火影は穏やかな顔つきで言った。
「そういえば、とはどうじゃ?あれから上手くいっとるか?」

カカシの以前とは別人のように違う表情を見ていれば聞かずとも判ったが、火影はあえてカカシに問いかけた。


「あーそれなりに上手くいってますよ。」
カカシは、少し照れながらも答えた。

「そうか。ならよい。にたまにはわしの所に顔を出すようにいっといてくれんか?」

「わかりました。では、失礼します。」


そう言って、カカシは火影の部屋からさがった。




家に帰ると、にこやかなと相変わらず無愛想なムサシが待っていた。

「お帰りなさい、カカシさん。」

「ただーいま。ムサシもごくろーさん、今日はもういいよ。」

「わかった。」

「じゃあね、ムサシくん。」

「あぁ、またな。」


現れる時と同様に、ムサシはドロンという音と多少の煙を残してその場から消えた。


カカシはつけていたものをあらかた外し終えると、ソファーに腰かけた。


「お疲れさまです。今日は早かったんですねー」

こと、とは目の前の机に2人分のコーヒーを置き自分はカカシの向かい側に座った。


「ありがと。んーまあね、今日は三代目とちょっと話した程度だったからねー」

「火影様とですか?」

「うん、そう。そういえば、三代目がにしばらく会ってないからって寂しがってたよ。」


そういえば、あれから1回も行ってないんだっけ。

「じゃあ今度会いに行ってきます。」

「きっとあのじーさんの事だから、喜ぶよ。」

「ふふふ。あ、カカシさんこのあとって何か予定あります?」

「いや、特になにもないよー。」



それを聞いたはとても嬉しそうにしていた。


「あの、もしお疲れじゃなかったらこのあと散歩にいきませんか?」


「散歩?」


「はい。公園の桜がちょうど見ごろできれいなんですよ。」

「へぇーそうなんだ?」


わずかな間しか咲かない桜を見るというのは、
がこうして提案してくれなければ日々任務に追われるカカシは気がつかずに過ごしていたかもしれない。


「んじゃあ、ちょっと休憩したら行こーか。」

「はいv」


桜を見ることよりも、カカシにとっては嬉しそうなの表情が見れることの方が心踊るものがあった。






「へぇー結構すごいんだねー。」
カカシは桜を見上げながら、にそう言った。

「今週中くらいが見ごろだと思いますよ。」

「桜ってすーぐ散っちゃうもんね。」


きっとその儚いかんじが、人の心を惹きつけてやまないんだろうけど。


カカシとは、せっかくだからゆっくりしていこうと言いたげにどちらからともなくベンチに腰かけた。



「お弁当、持ってきてもよかったですね。」

「あぁ、いーね。花見酒ってのも悪くないしね。」

「カカシさんは、お酒強いんですか?」

「んーまぁ、飲まれた事はないかな。は?」

「私ですか?んーっと、酔っぱらうまで飲んだことがないのでわかんないですねー。」

「そうなんだ?」

「はい。」


「ふーん。」


それきり黙ってしまったので、は不思議に思って隣に座るカカシの顔を見ると、
なにやらニヤニヤとよからぬ事を考えている顔をしている。



「・・・カカシさん。」


「ん?なーにv」

「またなにか私をからかうこと考えてるんじゃないですか?!」



「そーんなこと考えてないよ。べろんべろんに酔わせて・・・vvなんてね〜。」


「なっ!!!なに考えてるんですか///」
今度はヤラシイ事になってる(汗!!



「くくくっ、冗談だよ。って何言ってもおもしろいねー。」

「カーカーシさーん!!!」

「あははは、そんな怒んないでよー。」

「怒りますよ!もうっ。」


相変わらずな2人だったが、はたから見ればそれはとても楽しげに見えた。






「そういえば、あの男の子。」

「んー?」

は金髪でポツン、と1人でブランコに座っている男の子に目線をやった。


「最近ムサシくんと散歩によく来るんですけど、いつも1人でいるんです。」



「気になる?」



「え?えぇーまぁ・・・・少しは。」

「あの子はこの里でもちょっと訳ありでね。」

「そうなんですか?」


「ん、・・・あ、ねぇお花見。お弁当持ってってさっきのやつ。今週末にやろっか?」

「え?あ、はい。」

カカシが急に話の話題を変えるのは、わりといつもの事ではいつもはぐらかされているような気がした。

それが、少しだけ寂しい気もしたが
よそ者の私が詳しく聞いてはいけないことなのだろう、と思いはあえて聞き返すようなことはしなかった。


「ダメ?」


「いえ、いいですよ。」


カカシの右目が優しく微笑んだので、つられても微笑んだ。
カカシとの花見が今からとても楽しみになったであった。




「そういえばねー」


家に帰り、ゆっくりと2人で夕飯を囲んでいるとそんな調子でカカシがに話を切り出した。


「はい。」


「オレ、先生になるかもしれないんだ。」


「え?」


カカシさんの話はこうだ。

忍として今まで自分の力を発揮してきたが、そろそろ下の代の者を育てる時期になってきたため
これからはアカデミーと呼ばれる学校に通う、忍者の卵たちの面倒をみることになるのだという。

ただ下忍になるためには、各指導者にあたる上忍たちがあらかじめ用意した試験に合格しなければならないそうで、
今までもカカシさんが先生になる機会は何度かあったがどの子も中々カカシさんの期待に答えられないという結果に終わったそうだ。


「じゃあ、今回はどうして先生になるかもって思うんです?」

「んー今回は、ちょっとおもしろいヤツらがいてね。もしかしたら、って思ってるんだ。」

「そうなんですか〜。あまり忍者のことはよくわからないですけど、私カカシさんには是非先生になって欲しいです。」



「どうして?」


カカシはがなぜ自分を先生に、と望むのかわからなかった。


「だって・・・下忍って忍者になりたての子どもたちの事ですよね?」

「そーだよ。」

「ってことは、そんな子どもたちがこなす任務なんてそんなに危ない事はしないですよね?」

「うん、まー草むしりとかいなくなったペット探したり、おつかい程度かな。」


まだの言わんとする事が見えない。
だが、カカシは焦らずの言葉を待った。


「その子たちの指導にあたるってことは、カカシさんが危ない目にあう事も少なくなるって事じゃないですか。」

「ま、自然とそうなる機会は減るねー。」



「こんなこと自分でも色々おかしいとは思います。でも・・・私、カカシさんがケガするのはなんだかイヤなんです。」


はっきりと自分の目をみて告げるは、心の底からそう願っているようだった。


「////」
だからオレに先生になって欲しいって言ったのか。


カカシは思わず顔を背けてしまった。


「あれ?カカシさん?」

「なに、今こっち見ないで。」

はそっとカカシが顔を背けた方に自分の顔を向けてみると・・・


!!!!
カカシさん、なんだか顔が赤いような。
もしかして・・・照れてる、とか?


「カカシさん♪♪こっち向いて下さいv」

「ヤーダね。」

「ふふふvカカシさん。」

「なに。」

「今回は私の勝ちですねvv」


・・・くそっ。
いつもからかう側の自分がからかわれている事が少し悔しい気もしたが、
それ以上に誰かに大切に思われる事の心地よさを感じて、の言葉が素直に嬉しかったカカシであった。




それから、しばらく経ちカカシは晴れて第七班の先生となったとは聞かされた。
以前とは違い、だいたい夕方には帰るようになったカカシは、と一緒に過ごす時間が増えた事で毎日とても嬉しそうだ。

「じゃあ、いってきまーすv」

「はい、お気をつけて。」

「ムサシ、の事頼んだよ。」

「あぁ、わかってる。」

そう言ってカカシは手を降り、玄関を出ていった。
もはや、この見送りは毎日の決まりごとと言ってよいほどになっている。


「さーてと。さっさとやることやって、お散歩行こうね〜ムサシくんv」

「お前な。」
忍犬の中でも指折りに入る自分が、このはどうやらペットとして見ている節がある。


「なーに?」


この俺をペット扱いするな、と思わず口から出そうになったムサシであったが
を見ているとそれもまたありか、と許し始めている自分がいた。

「まぁ、いい。なんでもない。」


「???変なムサシくん。あ!お腹減ったの?」


「違うわ!」


この女にかかれば、エリート上忍もその部下の忍犬もただの人と犬なのだ。
どんなに人々に恐れられ、敬われていても違う世界から来たのなら無理はない。


「ごめん、ごめん。出来るだけ早くお散歩行けるように頑張るねv」


はぁ〜。
まぁ、いい。そういう事にしておこう。


普段無口で近寄りがたい、ムサシもには気を許しているようだった。
この2人(1人と1ぴき?)の友情物語はまた今度♪♪




すっかり、午前のうちにやることをすましてしまったは早速といった具合に午後からムサシと近くの公園に繰り出した。

「カカシさん、今頃先生やってるんだろうなー。」

ゆっくりと歩くの隣を、とてとてとに併せてムサシが歩く。


「さあな。アイツは指導者向きだとは思えんからな。」

「うん?」

「忍として優秀なヤツが必ずしもいい指導者になれるとは限らんさ。」

「そうなんだ?そういえば、ずっと合格者出したことないって言ってたしねー。」

「あぁ。アイツ自身、幼くして上忍まで登り詰めた男だからな。自分の身で木の葉に貢献する方が性に合ってるんだろ。
 それに今の平和な木の葉に産まれてくる子どもたちじゃ、今一つ物足りないんじゃないのかと俺は思ってる。」

「ふーん。でも、今回は先生になったんだもんねー。」

「今回のヤツらはおもしろいんだと。カカシがそう言うなんて珍しい事もあるもんだな。」

「そっかー。でも、カカシさんってすごいんだね〜。」

「あぁ、まぁな。俺の主人だしな。」


そう言うと、は俺を見て急にニヤニヤしだした。


「なんだよ。」


「いや、ムサシくんて大人しくてカッコイイのに可愛いい事言うんだなーと思ってv」



「・・・ほっとけ。」


「えー怒ったの?」

ごめん、と隣で謝っているであったが特に気にさわったわけでもなく
俺の意識はすでに違う方へ向いていた。


アイツ・・・たしか。


「あ、あの子。」


「知ってるのか?」
俺の視線に気がついたのか、も隣で同じ方向を見ていた。


「んーん、知らない子だけど。この前カカシさんと一緒に来た時も1人だったなーと思って。ほら、ムサシくんと一緒にこの公園に来てる時もよく見かけたよ。」


そうか・・・は異世界から来たから知らないんだったな。
カカシから何も聞いていないなら、俺から話す事は何もないな。・・・って、オイ!!(汗



ムサシが気づいた頃には、隣にいたはずのはすでにその男の子のそばに行き、ちゃっかり話しかけていた。


俺は知らないからな。



「ねぇ、キミ最近よく見かけるね。」


は、しゃがみこんで目線を合わせブランコに腰かける男の子に話しかけた。


「お前、誰だってばよ。」

「私?私、って言うの。キミは?」

「・・・・・。」

男の子は何故か話しかけられて戸惑っているようだった。
普通、このくらいの年頃の子どもがここまで動揺するものだろうか・・・?

は、目の前の男の子が少し自分の中の今までの同じような年頃の子どもたちとは違うことに気がついた。


「どうしたの?」

「あ、俺に話しかけてくる大人ってあんまり今までいなかったから・・・びっくりしてるんだってばよ。」



・・・・???
なんだろう、何かが違う。


「ふーん、で?キミ名前は?」


「・・・・うずまきナルト。」


ギリギリ届いた声でそう言って、ナルトくんは顔を上げて私をチラ、と見た。
初め怯えた様子だったナルトくんの瞳は、今は少し好奇心が混じっている。


そんなナルトに少し興味が湧いたであった。


「ナルトくんっていうんだ。いい名前だね♪♪ご両親がつけてくれたの?」


「知らない。とーちゃんもかーちゃんも気づいたらいなかったから。」


・・・・・。


はこの時、初めて争いを間近で経験した気がした。


目の前の男の子は、少なくともどこかで起きた戦いに巻き込まれた犠牲者の内の1人なのかもしれない。
同情するのはこの子に失礼だと思った。
可哀想なんて気持ちで接する事は、この男の子は望んでないに違いない。



「ごめんね、変な事聞いちゃったね。」

「別にいーってばよ。」

「ありがと。じゃあさ、せっかく出会ったんだし何かして遊ぼっか。」


「は?」


ナルトくんは突然の私の提案に不思議そうな顔をしていた。

「アタシ木の葉に来たばっかりで、友達少ないのよ。毎日する事もほとんどなくてねー。
 だから、ナルトくんが友達になってくれたら毎日楽しいんじゃないかなーって思ったんだけど。」


「俺とあんたが・・・友達?」



「そう!!・・・イヤ?」

「あ、・・・しょーがないからいいってばよ。俺が友達になってやっても。」

「やったvじゃあ今日から私とナルトくんは友達ね。」


そう言われたナルトくんは、とても嬉しそうな表情をしていた。


やっと子どもらしい顔が見れた。
友達になる、というのがよかったのかどうかはわからなかったが
はどうしてもこの見かける度に淋しそうに1人でポツン、と公園に佇む男の子を放って置けなかった。


この世界に1人、毎日不安に思っていた自分をどうしてもナルトに重ねてしまっていたのだ。
この子ももしかしたら、この世界に1人なのかもしれない。
そう思ったらは遠くから見ているだけではいられなくなった。




ナルトくんと友達になってから、ムサシくんも交えて3人で仲よく遊んでたくさん話をした。
初めの頃に比べて、ナルトも警戒心を解いたのか持ち前の明るさを取り戻したようだった。


「俺ってば、こないだから下忍なんだ!」

「そうなの?すごいじゃない!!試験って難しいんでしょ?」

「まぁね、でもそんなのこのうずまきナルトにしたら屁でもないってばよ。」

「へぇ〜ナルトくんってすごい忍者なんだね♪♪」

に誉められて嬉しかったのか、ナルトは恥ずかしそうに照れていた。


「へへへっ、でも俺の班の先生がスッゲェーヤな奴でさ!いつも遅刻してくるし、
 最初の日なんて俺のイタズラにかーんたんに引っ掛かったんだってばよ。」

「そうなの?」


そんな人が先生って・・・大丈夫なのかしら(汗


「任務でもすぐ俺たちに任せてサボろうとするし。」

「あら、いけない先生ねー。任務は大変?どんな事してるの?」


ナルトくんは、口ではつまらない任務ばかりだと言っているが表情は柔らかくとても楽しそうに話していた。
初めの頃とは大違いねv

すっかりなついてくれたナルトをは弟のように感じていた。




・・・そろそろ帰るぞ。」
放っておいたらいつまでも話していそうな2人に見かねたムサシは、間を割って入った。

「あ!もうそんな時間?大変、帰らなくちゃ。ナルトくん、遅くまでごめんね?」


今まで楽しそうに話していたナルトくんが、急に下を向いてしまった。


「俺・・・・別に待ってる人も迎えに来てくれる人もいないから、平気だってばよ。」


本当なら、家においでって言ってあげたいんだけど・・・
私も居候だから、ごめんねナルトくん。


「ナルトくん、またね。」

は、またねの部分を強調して言った。


「??・・・うん。」

「ナルトくん、私またこれからもここに来るから。そしたら遊ぼう?」



ねーちゃん。」



「ナルトくんの任務の話とか、その面白い先生の話とかこれからもたくさん聞きたいな。」

「・・・うん。わかったってばよ!!」


ナルトくんは顔をあげて、目を輝かせて言った。


「今度はねーちゃんにサクラちゃんの話聞かせてやるよ!」

「サクラちゃん?」

「ししし、俺の好きな子。」


あら、最近の子ってませてるわね。
でも、なんだかナルトくんが普通の男の子でよかった。


「楽しみにしてる。あ!」

「ん?なんだってばよ。」

「今度ね、私の知り合いの人とここでお花見しようって事になったの。
 その人も先生になったばっかりの人でね、生徒の子達にも来てもらえばいいなって思ってたんだけど。・・・・もしナルトくんがよければ一緒にどう?」



「俺が?」



「そう。」


「いいの?」

ナルトくんは、再び怯えたような疑うような目をした。

「もっちろん!ナルトくんは私の友達だもん。」

「あ、・・・ねーちゃん。」

「ん?」




「ありがと・・・ってばよ。」




友達だとはっきり言われた事がよっぽど嬉しかったのか、ナルトくんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。

「じゃあ、今週末ここでするから。」

「うん、俺ってばスッゲェ楽しみ!」

「ふふふ、じゃあまたねv」


そう言ってナルトと別れ、ムサシと2人家路についたであった。




ってやっぱ変わってるな。いや、鈍いというか天然というか・・・」

「ん?なーに?ムサシくんなんか言った?」


「いや・・・なんでもない。」


ナルトの先生のことも、ナルトが九尾だということも事情を全て知っているムサシは
笑っていいのか用心した方がいいのかよくわからない気持ちだった。



まぁ、九尾の事はが知ってもナルトへの態度が変わることはないだろう・・・・。


カカシのことは・・・面白そうだから黙っておくか。


案外ムサシは腹黒いヤツなのかもしれない(笑




後半に続くvv




はい、久々の連載でーす。
オリキャラのムサシが出張ってる・・・(汗
すみません、でも結構気に入ってるキャラだったりします。

思いがけず、書きたいこと詰めていったら長々としてしまったので前後に分けてみました。
そしてそして、カカシ先生が当連載でも先生になりましたー!!!!
この後ナルトだけじゃなくて、クールな彼とカワイイ彼女が登場ですv

ちゃんとしたあとがきは後半にてw
思いのたけを述べさせていただきます(ぇ


それでは後半お楽しみください(^^)♪♪